言いたいことは山ほどある。

性別や障害、属性で気になること。

認知の歪み

 「ニンゲンなら誰でも」などとお気楽に書かれているが、それがハンパないレベルで人格に陰を落とすのがパーソナリティ障害の問題点。アスペルガーでもこだわりや極端な物の見方から歪みが生じやすい。ダブルで来るから自分の認知の歪みはかなりひどかった。おそらく最初はアスペルガーの影響で、その結果、パーソナリティ障害を起こしたのだろうと思う。

 どの項目もいちいち心当たりがある。言い回しも自分が馴染んでいるもので解説してみると、以前よりはマシになったものの、まだまだやらかしてるなあと思う。

 

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1.すべてか無か
 アスペルガーがやりがちと言われるのがコレ。中間がなく、極端から極端に振り切る。自分もすごくやりがち。ちょっとでもケチがつくと評価を極端に落として全否定してしまう。「ちょっとでもケチが」と言っても、本人にとっては世界の終わりくらいの衝撃なのだ。境界性パーソナリティ障害でも対人評価でこれをやるから、相手への評価が手のひらを返したように極端に変動する。「白か黒か」といった二分化思考にも顕れる。

 この傾向が強いと口癖のように、「常に~」「いつも~」「完全に~」「決して~」「絶対に~」を連発する。

 まず前提として「認知の歪み」があって、何か(誰か)を全肯定してしまう。そのため些細な欠点が大きな衝撃で捉えられてしまう。まず「完全なものなどこの世にはない」「完全な人などこの世にはいない」という、「当たり前な捉え方」を練習しよう。

 

2.一般化のしすぎ
 自分は「過度の一般化」と呼ぶが、1にも通じる極端な物の見方から出て来る極論癖。落ち着いて思い出してみればそうじゃないことも沢山あるのに、1~2の例を捉えて極端な論を組み立てる。または1~2度の出来事を「いつもそうなる」と過大に評価する。ある属性が犯罪者予備軍などと考えるのもこれの一種。(例:犯人がアスペルガーの事件が1つ起きると、アスペルガーは犯罪者予備軍と一般化する。自分がそうだから誰でもそうだと一般化する等。)

 これは論理性の弱さに関係している。少しの証拠を持って結論づけてしまう。その一方で、アスペルガーだとすぐ「70%の確立で」「85%はそうなる」など、サンプリングが明かに歪んだデータを元に思い込みを強めがちだ。まずは冷静になって「本当にそう言い切れるか」を考えてみよう。キーワードは「科学する心」。

 

3.心のフィルタリング
 自分は「視点の固定化」と呼ぶのだが、1つの悪い出来事で頭がいっぱいになり、別の視点を持つことができない。別の角度から考えることができない。自分に都合の良い判断材料だけを集めるのもこれの一種だし、逆に悪い材料ばかりを集めるのも同じ。客観的で妥当な判断に導くことができず、失敗を繰り返す。アスペルガーはこれが強く、違う角度から検証したりが苦手だ。応用力の弱さでもある。そうとなったらそれ以外は発想できなくなる。

 対処法としては他人に意見を仰ぎ、一旦は素直に耳を傾けるよう心がけよう。(検証した結果、納得がいかないと批判を加えるのは自由。その場合は十分な根拠を用意して反論するのが意見をくれた人への敬意となる。即座の反論・即日の反応は避けて、時間をかけて検証しよう。でないと意見を言ってもらえなくなる。)

 

4.マイナス思考
 悪い結果だけを予想する。良い兆候も悪い結果に結びつくと考える。ポジティブ思考の反対でネガティブ思考(否定的な思考)とも言える。うつなどになると明るい将来を想像できなくなるのもこれの一種だが、パーソナリティ障害の場合はそれが長期間継続する。

 悪いことを予想して準備するほうが万全だから必ずしも間違った手法ではないのだが、行き過ぎると物事の予想を正確につけることができない。「起こりやすさの確率」を考える習慣をつける。そして順番をつけてみる。そうすると最悪の事態の「起こりやすさの確率」はさして高くないことに気づく。

 

5.結論の飛躍
 論理的思考を放棄して、結論にジャンプする飛躍思考。悪いことが起きるほうが怖いから、そちらばかり考えてしまう。4のマイナス思考に近いが、こちらは予想というより結論を出してしまう。
 2つのパターンがあり、「心の読みすぎ」は相手の表情が一瞬でも曇ると自分に悪い感情を持っている・自分を嫌いだと結論づける。結論づける前に相手に確認してみよう。もう1つの「先読みの誤り」は、判断材料も揃っていないのに未来を悪くなると決めつける。4と対処方法は同じ。

 「悪いことが起きると怖い」と先回りして悪い可能性ばかり想定してしまう場合は、「そうなってもたいしたことではない。十分に対処できる」と自分に言い聞かせる。たいていの場合、何とかなることしか起きない。

 

6.拡大解釈と過小評価
 些細な出来事を拡大解釈し、自分に誇大に悪い評価を下す。自分の能力を過剰に高く見積もっていたり、自分への期待が高すぎると起きやすい。まず、そもそもが自分を過大評価しているのが原因。

 非常に大仰な考え方をするアスペルガーに見られる。表現もいちいち大仰だ。自分の重要性を軽く見たり、中二性を軽減することで対処する。自分は世界の重要人物ではないし、自分なんてたいしたことないと心がけて考えよう。(自己肯定感は下げないように注意。)

 

7.感情的決めつけ
 論理性や合理性、事実関係の確認による判断をせず、感情的に短絡した結論に飛躍する。5にも通じるが、判断の根拠が感情(情理的)であるところが特徴。本人は論理的なつもりでも、感情的になって極端なことを口走るときに起こりやすい。

 自分で感情的かを判断するのは難しいので、第三者に「感情的な意見か」を質問してみる。どこに論理の飛躍があるのかを指摘してもらえるとなお良い。相手が情理的な人だと質問しても意味はないので、相手を選ぼう。

 

8.すべき思考
 常に「~すべきである」「~すべきでない」と考えたり、言い回しを多用する。過去の出来事に対しても、起こったことを受け入れるのではなく「~すべきであったのに」「~すべきではなかったのに」と考えてしまうため、現状の受け入れができなくなる。「起きてしまったことは仕方がない」と考えるよう心がける。未来のことは「なるようにしかならない」と考えよう。

 また、他人の行いにも「~すべき」「~すべきでない」と考え、他罰的になったりパターナリズムを発揮したりする。結果、偏見が強くなり、簡単に差別的言動を行う。例:「まともな日本人なら~するはずだ。(~しないのは日本人ではない。)」2にも通じる。「他人のことはどうしようもない」と諦めるようにしよう。「関係ないし」と心になくても差し挟むようにする。


9.レッテル貼り
 2の「過度の一般化」にも通じる決めつけ。ラベリングは分類や把握のために必要だが、妥当でないラベルを貼ることにより認知を歪めてしまう。「そう判断するだけの十分な根拠があるか」を常に心がける。また、レッテルの意味を正確に把握する努力を怠らない。

 先読みの決めつけにも通じるから、「予想で怒る」ことをやめる努力をする。まだ起きていないことを「こうするに違いない」と予断を持って、先回りして腹を立てるのをやめよう。対処法は「怒る前に確認する」。

 

10.個人化
 「自己関連づけ」とも言い、出来事に対し過剰に自分の責任や関与を考えてしまう。夫の浮気に責任を感じる妻(自分が妻として駄目だから夫が浮気する)などが顕著。夫の浮気の原因が、単に「多数の女性と関係を持ちたい」本能的なものである場合でも、自分に関連づけて考えてしまう。一言で言うと自意識過剰。

 無関係な事象を自分に紐付けすることも多い。(鏡が割れたから悪いことが起きる等の迷信はたいていこのパターン。)本当に2つの事柄には関連性があるかを考える習慣をつける。自分に関しては、「自分はそれほど重要な人物ではない」と認識する。

 

◎合理的で根拠のある妥当な判断

 上の10項目を眺めると、認知の歪みと呼ばれるものには似たような傾向があることが分かる。無根拠な決めつけ・先読み・極端な判断・少ないデータでの言い切り・予想で断定などだ。データにこだわりすぎると、「データがあるのだから間違いない」と思い込む結果になる。「起こりやすさの確率」を意識するとその思考から抜けられるのだが、今度は確率に固執しはじめる。どこまで行っても極端なのだ。

 自分は本当に上の10パターンを絵に描いたように踏襲し続けていた。自分が固執したのは「合理性」「論理性」「妥当性」だったから他人からはあまり滅茶苦茶には思われない面もあったが、決定的に抜けていたのが「妥当な根拠」だった。口では「根拠、根拠」と繰り返すくせに、自分が提示する根拠が十分か、サンプリングが偏ってないか、妥当かはほとんど気にしなかった。非常に悪い癖で、今でも極論を言う傾向はある。

 認知の歪みは「悪い癖」でもある。習い性というやつだ。良い癖というものがあるかは知らないが、少なくともこれらは悪い癖だ。思考の癖を取る時に気をつけると良いのは、頭の中で使う言葉を含めた表現。口に出す場合は更に注意が必要。たとえば「べき」を使うのを一切やめてみるとか「絶対」を使わないとか、そういう些細なことでも効果はある。言葉の持つ力は非常に大きい。人間は言葉でしか思考できないからだ。