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言いたいことは山ほどある。

性別や障害、属性で気になること。

反社会性パーソナリティ障害という診断名に思う

 以前にパーソナリティ障害についてまとめた時、反社会性はあまり診断されないのではないか、と書いたのだが、実際にはそうでもないらしい。この2ヶ月ほどで、ネットで二名ほど診断を受けたという人を見かけた。どちらもADHDの人だった。

 反社会性パーソナリティ障害とは何か。名前の通り反社会的行動を繰り返す人という意味だが、反社会的行動とは通常、犯罪を指す。それ故、このパーソナリティ障害を犯罪者予備軍などと揶揄する人もいる。

 DSMによる診断基準は以下の通り。

 

www5f.biglobe.ne.jp

 

 必要条件は患者が18歳以上である事、15歳以降に以下の3つ以上が当てはまる事、行為障害(素行障害)が15歳以前からある事。

 

1.法にかなう行動という点で社会的規範に適合しないこと。これは逮捕の原因になる行為を繰り返し行うことで示される。

2.人をだます傾向。これは自分の利益や快楽のために嘘をつくこと、偽名を使うこと、または人をだますことを繰り返すことによって示される。

3.衝動性または将来の計画をたてられないこと。

4.易怒性および攻撃性。これは、身体的な喧嘩または暴力を繰り返すことによって示される。

5.自分または他人の安全を考えない向こう見ずさ。

6.一貫して無責任であること。これは仕事を安定して続けられない、または経済的な義務を果たさない、ということを繰り返すことによって示される。

7.良心の呵責の欠如。これは他人を傷つけたり、いじめたり、または他人のものを盗んだりしたことに無関心であったり、それを正当化したりすることによって示される。

 

 行為障害とは、社会規範やルールの逸脱、度を超した喧嘩、放火や窃盗、繰り返される虚言、ずる休み、所有物の破壊、反発的で挑発的な行動、持続的な激しい反抗など。いわゆる反抗期に見られるような行動。未成年者の場合飲酒・喫煙を含み、成人の場合は暴力傾向と犯罪傾向・性的逸脱を含む。

 ICD10では「非社会性パーソナリティ障害」と訳すが、反社会性と非社会性はかなり意味が違う。非社会的行動は犯罪傾向はないがモラルの低い行動を指し、反社会的行動はしばしば犯罪性を持つからだ。

 自分がこの診断名に注目するのは、「これほど重大かつ重篤な診断名を犯罪者以外に実際につけることがあるのか」という驚きからだ。反社会性は明らかに犯罪を意味する言葉である。

 

 英語ではソシオパス(社会病質者)とサイコパス(精神病質者)の2つが反社会性パーソナリティ障害に含まれるが、この2つはかなり違う。ソシオパスは社会性が著しく低い人で、サイコパスは異常心理の持ち主とされる。(通常の精神病や統合失調症の意味ではない。)

 サイコパスに見られる特徴は、情緒障害と言えるほどの共感性の欠如(そのため他者の苦しむ姿を愉快と感じる事が可能)、危険に対する鈍感さ(自らの危険に対しても極端に鈍い)、良心の欠如(違法行為をしても心が痛むことはない)といった点に顕れており、一説には先天的な脳の欠陥らしい。

 一方でソシオパスはこれらの程度が軽く、犯罪を悪いと思っていないが自己保身から避けて合法内での迷惑行為に終始する。先天的というより一定の素質によって顕れる人格で、多くは社会性の獲得に失敗した結果だ。

 両者にはハッキリした原因の違いは見られないが、結果は随分と違う。そしてソシオパスと非常に似ているのが自己愛性パーソナリティ障害だ。

 

www.huffingtonpost.jp

 

 これはソースがあまり学問的ではないが、ソシオパスは俗語であり学術上の定義が存在しない。どうでも良い項目を省いて特徴を挙げてみる。

 

・過大な自我の持ち主である。
・嘘をついて、人を操るような行動を示す
・共感の欠如
・自責の念や羞恥心の欠如
・恐ろしい状況、危険な状況でも、不気味なほど落ち着いている
・無責任な行動や、あまりにも衝動的な行動を取る
・友人がほとんどいない
・「楽しいかどうか」を人生の行動指針にする
・社会規範の無視 

 

 どうだろうか。自己愛性パーソナリティ障害と酷似していないだろうか。

 「友人がほとんどいない」については友人が作れないのではなく、他者と安定した関係を継続的に持てないためだ。人見知りやコミュ障と呼ばれる人とは逆で、積極的に他者に働きかけもするし、すぐ親しくなる。しかし、短期間で決裂するのだ。

 重要なのは「虚言癖」「共感の欠如」「不気味なほどの落ち着き(想像力の欠如)」「社会規範の無視」あたり。

 

 実際にはソシオパスという診断名はないから、反社会性パーソナリティ障害とつけられる。それは同時にサイコパスを意味してしまうため、犯罪傾向の強い者という誤解を招く。いや、誤解ではなく、本来そういう意味なのだ。これが社会性と想像力が低いとされるADHDにやたらつけられているとしたら問題ではないだろうか。

 以前にも「診断名ブーム」の話を書いたが、境界性パーソナリティ障害の大流行後、ブームが自己愛性パーソナリティ障害に移った。今は反社会性パーソナリティ障害がブームなのではないか。拡大解釈でブームに乗って乱発させた診断名が後で大変なことになるのはボーダーで体験済みだ。診断名は何度も付け直せるものでもない。精神医療関係者がムーブメントを起こすなんて馬鹿げていると思わないだろうか。まさに「病気は医者が作る」を地で行く話だ。

 推測するに、以前なら自己愛性パーソナリティ障害としていた患者を、ブームで反社会性パーソナリティ障害としてしまっているのではないだろうか。その中には自己愛性ですらない人――発達障害が原因で社会性や想像力の生長が遅い人まで含めてしまっているのではないか。発達障害者でも自己愛性を起こしている人も一部にはいるが、多くは自己愛性パーソナリティ障害ではない。

 そもそも発達障害の人を安易にパーソナリティ障害と診断する事には問題がある。精神年齢と実年齢も違うし、原因が生まれつきの能力の凹みなのだから定型発達者のパーソナリティ障害と同じ基準での診断には無理があり過ぎる。